多摩森林科学園サクラガイド

種名・栽培品種名 学名 解説
‘天の川’あまのがわ Cerasus Sato-zakura Group ‘Erecta’ サトザクラの栽培品種。花は薄い淡紅色で大輪八重咲き。枝が上向きに伸びることが特徴で、花も上向きに咲く。
‘アメリカ’あめりか Cerasus ‘Akebono’ 米国で広まった栽培品種。染井吉野より花色が濃い。米国では曙と呼ばれているが、日本ではアメリカと呼ばれる。
‘有明’ありあけ Cerasus Sato-zakura Group ‘Candida’ サトザクラの栽培品種。花は薄い淡紅色で大輪半八重咲き。花には芳香がある。京都で栽培される「有明」とは異なるので、「関東有明」とも呼ばれる。
‘市原虎の尾’いちはらとらのお Cerasus Sato-zakura Group ‘Ichihara’ サトザクラの栽培品種。白色で中輪八重の花をつける。枝に多くの花がつく桜は「虎の尾」と呼ばれ、いくつかの栽培品種がある。市原虎の尾は京都市市原にあったもので佐野園で増殖。
‘一葉’いちよう Cerasus Sato-zakura Group ‘Hisakura’ サトザクラの栽培品種。花は薄い淡紅色で八重咲き。和名は雌しべが葉化して葉のように見えることから。荒川堤から関東を中心に広まった。
‘鬱金’うこん Cerasus Sato-zakura Group ‘Grandiflora’ サトザクラの栽培品種。花は黄色で八重咲き。和名は花弁色をショウガ科のウコン(ターメリック)に由来する。‘御衣黄’とよく似るが花弁に濃い緑色部がないことから区別される。
‘海猫’うみねこ Cerasus x parvifolia‘Umineko’ 英国のC. Ingramがマメザクラとオオシマザクラから作出した栽培品種。花は白色一重咲き。横枝が張らない樹形。
‘永源寺’えいげんじ Cerasus Sato-zakura Group ‘Eigenji’ サトザクラの栽培品種。白色で大輪半八重の花をつける。遺伝的には‘鬱金’に類似しており、枝変わりと推測される。滋賀県永源寺町の永源寺にあったもので佐野園で増殖した。
‘江戸’えど Cerasus Sato-zakura Group ‘Nobilis’ サトザクラの栽培品種。花は淡紅色の大輪八重咲き。枝先に多くの花序をまとめてつける。‘楊貴妃’に似るが萼片はより細長く、正常な雌しべは少ない。各地で様々な名称で呼ばれている。
‘大沢桜’おおさわざくら Cerasus Sato-zakura Group ‘Ohsawazakura’ サトザクラの栽培品種。淡紅色で大輪八重の花をつける。京都市嵯峨大覚寺の大沢池にあったもので1940年に佐野園で増殖された。古くから栽培されていた桜のひとつと考えられる。
‘大村桜’おおむらざくら Cerasus Sato-zakura Group ‘Mirabilis’ サトザクラの栽培品種。花は薄い淡紅色で大輪八重咲き。二段咲きをするが、花弁は平開して二段目の花がよく見える。長崎県大村市の大村神社の木が天然記念物に指定されよく知られているが、西光寺の木はより古い。
‘オカメ’おかめ Cerasus ‘Okame’ 英国のC. Ingramがカンヒザクラとマメザクラから作出した栽培品種。花は紅色一重咲き。横枝が張らない。
‘御室有明’おむろありあけ Cerasus Sato-zakura Group ‘Omuro-ariake’ サトザクラの栽培品種。白色で大輪半八重の花をつける。仁和寺で栽培されている桜の代表。荒川堤の有明と区別するため、御室有明という。枝変わりなのか樹形が異なる系統がある。
‘片丘桜’かたおかざくら Cerasus leveilleana ‘Norioi’ カスミザクラの栽培品種。稚木の桜と同じように長枝の先に花をつける。
‘河津桜’かわづざくら Cerasus x kanzakura ‘Kawazu-zakura’ カンヒザクラとオオシマザクラサトザクラの雑種の栽培品種。花は薄い淡紅色で大輪一重咲き。原木は1960年代に河津町の民家に植えられた。現在は河津町に数千本植えられ、観光資源となっている。
‘寒桜’かんざくら Cerasus x Kanzakura ‘Praecox’ カンヒザクラとヤマザクラの雑種の栽培品種。秋から咲き続けるものを除くともっとも早く咲く桜。花は薄い淡紅色で中輪一重。実生でも増殖していたと考えられ、いくつかのクローンが含まれる。
‘関山’かんざん Cerasus Sato-zakura Group ‘Sekiyama’ サトザクラの栽培品種。花は紅色で大輪八重咲き。開花時の若葉は紫褐色で、木全体が赤く見える。比較的丈夫で成長も良いことから、公園などによく植えられており、八重桜の代表。
‘御衣黄’ぎょいこう Cerasus Sato-zakura Group ‘Gioiko’ サトザクラの栽培品種。花は大輪八重咲きで、濃い緑色と淡い黄色が混ざる花弁をもつ。遺伝的には‘鬱金’と同じで、枝変わりの関係にある。そのため、時に‘鬱金’のような花をつける枝も出る。
‘釧路八重’くしろやえ Cerasus sargentii ‘Kushiroyae’ 北海道釧路市の稲澤六郎がオオヤマザクラを用い、花色の濃い個形の実生の養成を繰り返して選抜された栽培品種。花は濃紅色で八重咲き大輪。1981年に品種登録された。
‘熊谷’くまがい Cerasus x subhirtella ‘Kumagai’ マメザクラとエドヒガンの種間雑種の栽培品種。花は淡紅色の中輪八重咲き。八重紅彼岸や正福寺など春だけに咲く八重のコヒガン類をまとめた。複数クローンが含まれる。
‘気多の白菊桜’けたのしろぎくざくら Cerasus jamasakura ‘Haguiensis’ ヤマザクラの栽培品種。花は白色で大輪菊咲き。二段咲きの花も混じり、結実することもある。原木は石川県羽咋市の気多大社にあって国の天然記念物に指定されていたが枯死した。
‘兼六園菊桜’けんろくえんきくざくら Cerasus Sato-zakura Group ‘Sphaerantha’ サトザクラの栽培品種。原木は石川県の兼六園にあって、国の天然記念物に指定されていたが、一度枯死した。
‘越の彼岸桜’こしのひがんざくら Cerasus x subhirtella ‘Koshiensis’ マメザクラとエドヒガンの種間雑種の栽培品種。富山県南砺市に自生地があり、自然に生まれた雑種を栽培化したと考えられ、複数クローンが含まれている。‘小彼岸’に似るが、花はより大きく樹高も高くなる。
‘塩釜桜’しおがまざくら Cerasus Sato-zakura Group ‘Shiogama’ サトザクラの栽培品種。花は薄い淡紅色で大輪菊咲き。小花柄に毛がありカスミザクラの関与が推測される。原木は宮城県塩釜市の塩釜神社にあり、国の天然記念物に指定されているが、複数タイプあると思われる。東北各地で古くから栽培していたと考えられる。
‘四季桜’しきざくら Cerasus x subhirtella ‘Semperflorens’ マメザクラとエドヒガンの種間雑種の栽培品種。花は薄い淡紅色の中輪一重咲きで‘小彼岸’と違いはない。しかし秋から春にかけて咲き続ける点が異なる。実生でも増殖していたと考えられ、いくつかのクローンが含まれる。
‘静香’しずか Cerasus Sato-zakura Group ‘Shizuka’ サトザクラの栽培品種。浅利政俊が天の川と雨宿を人工交配させて1960年に育成した。花は白色で大輪八重咲き。花には芳香がある。
‘枝垂大臭桜’しだれおおくさえざくら Cerasus x sacra ‘Pendula’ ヤマザクラとエドヒガンの雑種の栽培品種。‘オオシマザクラの関与も考えられるが、’枝垂桜とヤマザクラの雑種と考えられる。いくつか似た原木があるがその関係はまだ不明。
‘枝垂桜’しだれざくら Cerasus sapchiana ‘Itosakura’ エドヒガンの栽培品種。枝が下向きに垂れる点だけ、エドヒガンの野生タイプと異なる。平安時代から栽培されており、寺社などに老大木が多い。
‘十月桜’じゅうがつざくら Cerasus x subhirtella ‘Autumnalis’ マメザクラとエドヒガンの種間雑種の栽培品種。花は薄い淡紅色の中輪八重咲き。秋から春にかけて咲き続ける点は‘四季桜’と同じだが、八重咲きが異なる。複数クローンが含まれる。
‘松月’しょうげつ Cerasus Sato-zakura Group ‘Superba’ サトザクラの栽培品種。花は薄い淡紅色で大輪八重咲き。開花時の葉芽は緑色で、花色との対比が鮮やか。萼片には明瞭な鋸歯があることが特徴。
‘上匂’じょうにおい Cerasus Sato-zakura Group ‘Affinis’ サトザクラの栽培品種。白色で中輪半八重の花をつける。花には芳香がある。上香とも表記される。
‘白雪’しらゆき Cerasus Sato-zakura Group ‘Sirayuki’ サトザクラの栽培品種。白色で大輪一重の花をつける。花が咲く時期に葉芽は伸びない。萼筒は有毛。花弁はほぼ円形でツヤがある。三好学が荒川堤で発見・命名した。
‘白妙’しろたえ Cerasus Sato-zakura Group ‘Sirotae’ サトザクラの栽培品種。白色で大輪八重の花をつける。八重桜の中では比較的早く咲き始める。荒川堤にあった白妙と雨宿は区別されているが、現在確認できるものは同じクローン。
‘駿河台匂’するがだいにおい Cerasus Sato-zakura Group ‘Surugadai-odora’ サトザクラの栽培品種。花は白色で半八重咲き。花に桜餅と同じクマリンの香り。和名は駿河台の屋敷にあったことから。
‘仙台枝垂’せんだいしだれ Cerasus Sato-zakura Group ‘Sendai-shidare’ サトザクラの栽培品種。花は白色一重咲きで特徴はないが、枝垂れる樹形となる。1960年代から枝垂山桜や普賢枝垂などと呼ばれて栽培されている。すべて同じクローン。
‘衣通姫’そとおりひめ Cerasus x yedoensis ‘Sotorihime’ エドヒガンとオオシマザクラの種間雑種の栽培品種。花は淡紅色で大輪一重咲き。竹中要が東京都大島町の大島公園の‘染井吉野’の実生から1957年に育成した。‘染井吉野’と比べて明らかに花色が濃いことから区別される。
‘染井吉野’そめいよしの Cerasus x yedoensis‘Somei-yoshino’ エドヒガンとオオシマザクラの種間雑種の栽培品種。和名は江戸時代の終わりに吉野桜の名称で江戸の染井村から広まったことに因る。花は淡紅色で一重咲き。花つきの良さと成長が早いことから、現在では花見のサクラの代表。
‘太白’たいはく Cerasus Sato-zakura Group ‘Taihaku’ サトザクラの栽培品種。花は白色大輪一重咲き。英国のInglamが日本から得て栽培していたもの。荒川堤になく、英国から逆輸入された。しかし駒繋などは同一クローンであり、日本にも残されていたと考えられる。
‘手弱女’たおやめ Cerasus Sato-zakura Group ‘Taoyame’ サトザクラの栽培品種。薄い淡紅色で大輪八重の花をつける。萼筒にしわ状の凹凸がある。平野神社に原木があり、1927年に佐野園で増殖された。
‘高砂’たかさご Cerasus Sato-zakura Group ‘Caespitosa’ サトザクラの栽培品種。淡紅色で大輪八重の花をつける。チョウジザクラが関与しており、萼筒や葉面に長毛があることが特徴。南殿や武者桜など別名が多いがすべて同じクローン。
‘長州緋桜’ちょうしゅうひざくら Cerasus Sato-zakura Group ‘Choshu-hizakura’ サトザクラの栽培品種。淡紅色で大輪半八重の花をつける。荒川堤の長州緋桜は現在あまり広まっていない。一方石川県の兼六園から広まった兼六園熊谷は多く栽培されているが、同じクローン。
‘東海桜’とうかいざくら Cerasus ‘Takenakae’ マメザクラとカラミザクラの種間雑種の栽培品種。福岡県で生まれた啓太郎桜の実生を、兵庫県の大和農園が選抜して生まれた。啓翁桜や岳南桜などと名称の混乱が見られる。山形県では切り花として出荷される。
‘奈良の八重桜’ならのやえざくら Cerasus leveilleana ‘Antiqua’ カスミザクラの栽培品種。花は白色で大輪八重咲き。カスミザクラの重弁化したタイプ。原木は奈良県の知足院にあり国の天然記念物。三重県予野の花垣神社のものは似ているが別クローン。
‘二度桜’にどざくら Cerasus jamasakura ‘Hieteroflora’ ヤマザクラの栽培品種。原木は岐阜県大野町にあって国の天然記念物和名は一重のあとに八重の花が咲くから。
‘梅護寺数珠掛桜’ばいごじじゅずかけざくら Cerasus Sato-zakura Group ‘Juzukakezakura’ サトザクラの栽培品種。花は淡紅色で大輪菊咲き。小花柄が長く花は垂れ下がる。原木は新潟県阿賀野市の梅護寺にあって、国の天然記念物。
‘花笠’はながさ Cerasus Sato-zakura Group ‘Hanagasa’ サトザクラの栽培品種。浅利政俊が福禄寿の実生から選抜して1963年に育成した。花は淡紅色で大輪八重咲き。雌しべは1-2本で葉化する。
‘はるか’ Cerasus Sato-zakura Group ‘Haruka’ サクラ保存林の‘思川’の実生から選抜された栽培品種。花はうすい淡紅色で八重咲き。2012年に種苗登録を出願した。NHK大河ドラマ「八重の桜」に関連して主演の綾瀬はるかが命名した。
‘福禄寿’ふくろくじゅ Cerasus Sato-zakura Group ‘Contorta’ サトザクラの栽培品種。花は淡紅色で大輪八重咲き。花弁にしわがあってよじれる。荒川堤の八重曙とは異なるが、現在は混同されている。
‘普賢象’ふげんぞう Cerasus Sato-zakura Group ‘Arbo-rosea’ サトザクラの栽培品種。和名は普賢菩薩が乗る白象に由来する。花は淡紅色で八重咲き。代表的な八重咲きのサトザクラで、公園などに植栽される。
‘富士菊桜’ふじきくざくら Cerasus insica ‘Fujikikuzakura’ マメザクラの栽培品種。菊咲きか段咲き。渡辺定元が富士山で発見した。
‘不断桜’ふだんざくら Cerasus Sato-zakura Group ‘Fudanzakura’ ヤマザクラ系の栽培品種。原木は三重県鈴鹿市白子にあり国の天然記念物和名は秋から春まで咲き続けるから。
‘冬桜’ふゆざくら Cerasus x parvifolia 'Fuyu-zakura’ マメザクラとオオシマザクラの種間雑種の栽培品種。花は白色で中輪一重咲き。秋から咲く栽培品種にはマメザクラとエドヒガンの雑種が多いが、オオシマザクラが関与している。
‘紅鶴桜’べにづるざくら Cerasus ‘Rubriflora’ 川崎が真鶴半島で見つけた栽培品種。花は淡紅色で中輪一重。川崎は染井吉野と寒桜の交雑したものと推定したが、遺伝的にはカンヒザクラではなくマメザクラが影響している。
‘紅豊’べにゆたか Cerasus Sato-zakura Group ‘Beni-yutaka’ サトザクラの栽培品種。浅利政俊が松前早咲と龍雲院紅八重を交配させ1961年に育成した。花は紅紫色で大輪八重咲き。
‘松前更紗’まつまえさらさ Cerasus Sato-zakura Group ‘Matsumae-sarasa’ サトザクラの栽培品種。浅利政俊が水上と南殿を人工交配させて1970年に育成した。花は淡紅色で中輪半八重咲き。水上は松前町の個人宅にあったもの。
‘松前早咲’まつまえはやざき Cerasus Sato-zakura Group ‘Matsumae-hayazaki サトザクラの栽培品種。花は淡紅色で大輪八重咲き。萼筒や葉柄は有毛で‘高砂’に近縁だと考えられている。原木は松前町の光善寺にあって血脈桜と呼ばれて江戸時代から栽培されている。
‘御車返’みくるまがえし Cerasus Sato-zakura Group ‘Mikurumakaisi’ サトザクラの栽培品種。薄い淡紅色で大輪一重の花をつける。花弁が6-7枚の花もつけ、八重一重とも呼ばれる。和名は花を見た人たちが一重か八重かで争い、引き返して見たことに因む。
‘緑近畿豆桜’みどりきんきまめざくら Cerasus insica var. kinkiensis ‘Viridicalyx’ キンキマメザクラの萼筒が緑色のタイプ。通常は赤色だが、稀に自生する。
‘八重紅枝垂’やえべにしだれ Cerasus sapchiana ‘Plena-rosea’ エドヒガンの栽培品種。‘枝垂桜’の花が八重咲きになったもの。江戸時代から栽培されていると思われるが、明治時代に仙台市長であった遠藤庸治が仙台市内に植えたものから広まった。
‘湯村’ゆむら Cerasus x furuseana ‘Tajimensis’ ヤマザクラの栽培品種。原木は兵庫県新温泉町湯村の正福寺にある。正福寺にはコヒガン系の八重咲きもある 
‘陽光’ようこう Cerasus ‘Yoko’ 愛媛県の高岡正明が天城吉野にカンヒザクラの花粉を交配させて作出した栽培品種。花は紅色で大輪一重咲き。染井吉野より開花が早いので、近年よく植えられる。1981年に品種登録された。
エドヒガン Cerasus spachiana 東北から九州に分布する。花は白色から紅色と変異がある。開花時に葉芽は開かず、歯がないという意味から姥桜とも呼ばれる。萼筒はくびれたひょうたん形。直径1mを超え、天然記念物に指定されている老大木も多い。
オオシマザクラ Cerasus speciosa 関東南部の伊豆諸島・伊豆半島・房総半島に分布する。花は白色大輪で、芳香がある。若葉は緑色。野生にも半八重咲きの個体が見られ、サトザクラの母体となったと考えられている。
オオヤマザクラ Cerasus sargentii var. sargentii 北海道から本州北部に広く分布し、西日本の山岳地にも点在する。花は淡紅色で紅山桜とも呼ばれる。若葉は赤褐色。寒冷地でも育つことから‘染井吉野’の生育が困難な北海道などではお花見の対象とされる。
カスミザクラ Cerasus leveilleana 北海道からから九州に分布する。花は白色から淡紅色。緑褐色の若葉をつけるものが多い。ヤマザクラやオオヤマザクラと混生するが、花期が遅いので区別できる。ふつう葉柄や花柄に毛があるが、無い個体もある。
カラミザクラ Cerasus pseud-cerasus 中国に分布する。実は食用となり、江戸時代には日本で栽培されていた。現在でも西日本を中心に見られる。
カンヒザクラ Cerasus campanulata 中国南部や台湾などに分布する。沖縄の石垣島にも野生の分布地があり国の天然記念物に指定されているが、もともと自生していたのか疑問視されることもある。花は濃赤色で花弁は開かない。本州には江戸時代に伝わった。
キンキマメザクラ Cerasus incisa var. kinkiensis 中部から関西の日本海側に分布する。樹高は低く、高くても4mほど。マメザクラと比べると萼筒が長い。
サトザクラ Cerasus Sato-zakura Group オオシマザクラを母体に生まれたと考えられる栽培されているサクラの栽培品種グループ。大部分の八重咲きの栽培品種が含まれる。これらはヤマザクラやオオヤマザクラなどが交雑していると考えられ、野生種としてのオオシマザクラとは異なる。形態に特徴がなく、栽培品種として認められないサクラの中には、種レベルの分類としてはサトザクラとされる場合もあるが、本冊子では遺伝子解析の結果から種を推定した。
セイヨウミザクラ Cerasus avium 西アジア原産。現在では広く世界で栽培されている食用のさくらんぼ。
チョウジザクラ Cerasus apetala var. tetsuyae 東北南部から中部の太平洋側に分布する。日本海側のオクチョウジザクラと中部のミヤマチョウジザクラとは変種の関係。いずれも葉面や萼筒などに長毛が密生する。花弁は萼筒よりも短く、目立たない。
ツクシヤマザクラ Cerasus jamasakura var. chikusiensis 九州の西部から南部の島嶼部に分布するヤマザクラの変種。本州のヤマザクラとオオシマザクラの中間的な形。
マメザクラ Cerasus incisa var. incisa 関東南部から中部山岳地に分布する。富士山周辺に多いのでフジザクラとも呼ばれる。花は白色で下向きに咲く。
ミヤマザクラ Cerasus maximowiczii 北海道から九州に分布する。10数個の花がつく総状花序は垂直に立ち、ヤマザクラなどとは明らかに異なる。葉が展開したあとの5月ごろに咲くので、お花見の対象とはならない。
ムシャザクラ Cerasus taiwaniana 台湾に分布する。エドヒガンに近縁であり、花や葉の形態は変わらない。しかし、花は白色で大木とならない。
ヤマザクラ Cerasus jamasakura var. jamasakura 東北南部から九州に分布する。白色の花と赤い若葉をつける。関東や関西では最も身近なサクラであり、江戸時代まではサクラの代表であった。