森林生物 マツカレハ



更新日:2020/03/18
和名:マツカレハ
学名:Dendrolimus spectabilis  Butler
    チョウ目カレハガ科
分布:北海道南部以南日本全土に分布
説明
アカマツ・クロマツなど全てのマツ属と、カラマツ・ヒマラヤスギを加害する。被害面積は、1975年までは数万haにおよんでいたが、近年は減少しているが、マツ材線虫病の防除の影響とみられる。成虫は雌で開張85mm内外、雄65mm内外であるが、色彩とともに個体差が大きい。卵は長さが2mm程度の長楕円形で淡赤褐色から青白色をしている。幼虫は脱皮が進むと黄褐色から黒褐色となり、個体差が大きくなる。全体に剛毛を生じ、胸部第2、3節背面の黒藍色の刺毛が目立つ。体長は大きいものでは90mmになる。繭は灰色から灰褐色で幼虫の刺毛がついている。普通年1回の発生である。茨城、京都、兵庫、高知、熊本、福岡、鹿児島などでは年2回発生する地域もある。年に2回発生する地域では複雑に生態となっている。年1回発生する生活史の場合、7月から8月に成虫が発生し、幼虫で越冬し、翌年の7月に蛹になり、成虫となるという経過を示す。この場合、春先の被害が大きくなる。産卵は針葉に卵塊状に産まれる。1卵塊の卵数は100~300個である。雌1頭の産卵数は200~600個である。孵化した幼虫は周囲の針葉の片側だけを食害することから、針葉が赤変する。早期発見の目安となる。幼虫はマツケムシと呼ばれる。この時期の幼虫は口から糸をはいて落下し移動する。2齢以降の幼虫は針葉を完全に食べる。繭は樹上や下草に作られる。被害が激しい場合枯損にいたることがある。食害量が多ければ枯損しない場合にも成長に影響をあたえる。本種の天敵についてはよく調べられており、補食性の鳥類、寄生性昆虫21種、微生物等がある。
                       
マツカレハ成虫(左:雌,右下:雄) マツカレハ幼虫(左)と樹幹上に産まれた卵塊(右下)

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